【脂質制限】その隠された危険性ーダイエット、胆泥

栄養の本音

1. はじめに:良かれと思って寿命を縮める

「病気だから、脂質(油)を減らすのは当たり前。ダイエットなら低脂肪がいいに決まってる。そもそも油抜きはヘルシー」

本当にそうでしょうか?

「そうですよ、獣医師に言われましたし、ネットにもそう書いてあります!」

たしかに脂の摂り過ぎは良くありません。ただし減らし過ぎにも問題があることを知っていますか?

「え!?それは・・・聞いたことがありません・・・」

 

病院もネット情報も、本当にフェアな説明をしてくれているかと言うと、残念ながらそうではありません。私は薬剤師の現場にいましたから、良く知っています。ここでは、おそらくみなさん、いままでに説明を受けてこなかったことを知ることになるでしょう。

脂質制限に隠された危険性(リスク)の話です。

ちなみに犬の体も、私たち人間の体も、内臓や消化の仕組み、細胞の成り立ちは基本的に同じです。血液も神経も、ホルモンもだいたい同じです。

ですので人で得られた知見は、ほとんどが犬にも当てはまる。この前提で話を進めますね。

 

それではリスクをお伝えします

ペット健康相談でお話を聞いていると、脂質制限を多くしている子が本当に多い。もしかするとあなたのご愛犬もそうかもしれませんね。

では例えば、ここに食事全体の重さに対して、脂質割合5%以下(乾物計算・重量比)の極端な脂抜き食を続けている犬がいるとします。

将来この子には、どんな健康リスクが想定されるでしょう。3つ挙げてみます。

 

リスク① 満腹センサーが動作しない ➔ 【食欲の暴走と強いストレス】

食べたものはまず胃に入り、次に「十二指腸」という場所へ流れていきます。ここには「食事の脂の量を感知して、満腹スイッチを入れるセンサー」が存在しています。

脂質5%以下の食事では、このセンサーが物理的にうまく反応しません。その結果、食べても食べても、なかなか満腹感が得られません。脳が満足したと認知しにくいのです。

なので脂抜きによるダイエットは、食欲の本能を満たしにくい。そのためペットに想像以上の精神的ストレスをかけ続ける結果となってしまいます。

異常に食べ物を欲しがったり、イライラして落ち着きをなくしてしまうのは、わが子の意志が弱いからではありません。体のセンサーが狂わされたことによる「助けて」という本能からの悲鳴なのです。

では健康リスクを説明します。ご存じの方も多いでしょうが、ストレスはあらゆる病気の背景となり、発症率の上昇、病気の難治化、治療期間の延長に関わります。

脂質制限が、毎日毎日このストレスとリスクを積み上げていきます。

 

リスク② 胆のうが収縮しない ➔ 【胆泥・胆管が詰まる】

肝臓の隣には「胆のう」という袋があります。ここには脂を消化するための消化液(胆汁)が溜められています。

先ほどお話しした「満腹スイッチを入れるホルモン」には、他にもいくつかの大切な作用があります。そのひとつは、胆のうをギューッと収縮させる作用。この胆のうの収縮によって胆汁が腸に押し出され、脂の吸収を助ける。これが生体の正常な仕組みです。

では、低脂質食を続けている子ではどうなるか?

だいたい予想がつくと思いますが、胆のうがしっかりと収縮しません。その結果、胆汁の水分が過度に抜かれて濃縮されます。やがて泥のようになる、つまり胆泥が形成されてきます。

また胆汁は、胆管の洗浄液でもあります。脂質制限で胆汁の流れが悪くなると、胆管に菌が住み着いて炎症を起こし、胆管を詰まらせてしまうことがあります。これが脂質制限で起こりがちな胆管閉塞症のメカニズムです。

出口を閉じられた胆汁はさらに溜まり、逆流し、肝臓を壊します。血液に溢れ出すと黄疸です。肝臓の機能が低下し、毒物が血液から取り除けなくなると、脳を始めとして全身に問題が出るようになります。

 

リスク③ 脂溶性ビタミン不足・吸収率低下 ➔ 【がん・肝臓病・腎臓病・皮膚炎・アレルギーの増加リスク】

すでに述べてきた通り、脂質は生体を駆動させるトリガーとして機能しています。脂をカロリー源としか説明しない情報は、私からするとかなり幼稚です。その程度の知識では病気ケアはもちろん、健康維持すら難しいと言わざるを得ません。

まるで幼稚園児が車を運転するようなもの。ひどく聞こえるかもしれませんが、そのくらいかなり危ないことなのです。

では具体的なリスクの話です。脂には健康維持において不足させるべきではない脂溶性ビタミンが溶け込んでいます。脂質制限下ではこの絶対量が減る上に、さらに胆汁量不足による消化吸収の効率低下が起こります。

これはかなりマズイ状況です。

ビタミンAやDは粘膜と免疫の要であり、ビタミンEは細胞の膜を健やかに保ちます。ビタミンKは血栓コントロールに関わり突然死のリスクを低下させます。不足すれば、まず目につくのは皮膚のカサつき、毛艶の悪化。さらには近年急増している「がん」「肝臓病」「腎臓病」、そして治らない「皮膚炎」や「アレルギー」といった多くの病気の背景となり得ます。

血栓症は発作的に発現することもあるうえに、その多くが発見できずに見逃されている。本当に危険で起きてからでは遅い。つまり有効な手立ては予防にあります。

 

身体の構成要素としての脂質

脂質をカロリー源とだけ見てはいけない理由は他にもたくさんあります。実は、脳の約60%は脂でできており、全身の数兆個の細胞を包む「膜」も、心を穏やかに保つ「ホルモン」も、脂が原材料です。

それを不足させながら、長寿のベースとなる強い身体、幸せを導く強いメンタルを維持できるでしょうか。私の答えはノーです。

 

ネットの情報は正しいか?

まず、これらは正しい説明で、間違っていません。

  • 脂質は他の栄養素に比べてカロリーが高い
  • 大量に摂っていると太る、病気が増える
  • 脂の摂りすぎで不健康になる

つまりネット情報は嘘をついているわけではありません。ですがここまで読んだ方ならわかるでしょう。けして正しいとは言えないですよね。

なぜならば、それはフェアじゃないからです。多く摂るときのリスクを説明しておきながら、少なすぎるときのリスクをしっかり説明していません。そうした情報は公平さを欠いています。

情報の偏りは、大衆を誤った道に誘導します。誘導すると言うよりも、大衆自ら誤った道を進んでいきます。文房具みたいな消耗品ならまだしも、命に関わる情報が偏っているのはマズイです。

実際に、ペット健康相談でのヒアリングにおいて、「脂質制限は徹底的にやるべき」といった考えの飼い主さんは少なくありません。自信たっぷり、少しも疑っていません。そして胆泥症や皮膚炎などの病気が治らないと悩んでいる。

冒頭のやり取りは、私がリアルに体験していることです。

「病気だから、脂質(油)を減らすのは当たり前。ダイエットなら低脂肪がいいに決まってる。そもそも油抜きはヘルシー」

本当にそうでしょうか?

「そうですよ、獣医師に言われましたし、ネットにもそう書いてあります!」

たしかに脂の摂り過ぎは良くありません。ただし減らし過ぎにも問題があることを知っていますか?

「え!?それは・・・聞いたことがありません・・・」

 

どうでしょう、改めて考えてみてください。ネット情報は本当に正しいでしょうか?鵜呑みにして大丈夫でしょうか?

極端な話を出します。クリームたっぷりのコーヒーを飲んでいた猫は、世界最高齢の38歳というギネス記録を打ち立てています。

事実なのですが、安易に真似しないでくださいね。でもこの隠された事実から、考えて頂きたいことがあります。

平均年齢15歳前後という日本の食事指導は、本当に正しいと言えそうでしょうか。

 

私(岡田)が考える健康的な脂の割合

岡田の考えです。一律の正解とは言えませんが、私が目安としている脂の割合です。

重量比(乾物換算)で、食事全体の15%前後

 

正当な理由で、長期的な脂質制限をする場合も10%を下回らないほうが良いと考えています。なぜならば先程挙げた問題があるためです。

ちなみにダイエットでの脂質制限は、私からすると正当な理由と言い難く、やるべきは脂質制限ではなく、バランスを維持したまま食事量全体を減らすべきだと考えています。

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