この「腎臓ケアの知識とアイデア」シリーズでは、ペットの健康長寿を決定づける最大の要である「腎臓」について、いくつかのテーマに分けてお話ししていきます。
皆さんはどの記事から読んでいただいても構いませんが、まずは腎臓という臓器の「本当の姿」を知っていただくために、この『①腎臓病の真実』から目を通していただけると嬉しいです。
がんに並ぶ死因のトップ、それが「腎臓病」
私が日々受けている相談において、腎臓病はトップクラスの悩みです。各種ペット保険会社が公表している統計データ等を見ても、現代の犬猫の死因において「がん(悪性腫瘍)」と並んで常にトップクラスに位置しています。
どんなに心臓が強くても、足腰が丈夫でも、腎臓病が進行すればQOL(生活の質)は低下し、完全に壊れてしまえば生命活動はその時点で終了となってしまいます。腎臓はまさに「寿命を決定する要の臓器」なのです。
腎臓の本当の役割:「リサイクルセンター」と「血液の工場長」
腎臓と聞くと「尿を作る場所」というイメージが強いですが、その役割は極めて多岐にわたります。
主な仕事は、体内の毒素やゴミを24時間体制で濾過して捨てる「最重要のゴミ処理場」です。いや、もっと正確に言いましょう。
本質的には「リサイクルセンター」と呼ぶのがぴったりで、捨てることよりも、残すものを選別することが腎臓の本当の役割です。
尿として捨てるのは本当に使えなくなったものだけです。大半の物質は再利用のために回収します。身体は究極のエコシステムであり、それに気づいたとき、腎臓の重要性はさらに際立ちます。
さらに、腎臓は「エリスロポエチン」というホルモンを出し、骨髄に対して「赤血球を作れ」と命令を出す「司令官」としての役割も担っています。
つまり、腎臓が壊れるとゴミが体内に溜まるだけでなく、赤血球が不足しだして重度の貧血を引き起こします。事実、腎臓病の末期で貧血が見られる子は少なくありません。
壊れた腎臓は「再生しない」し、病院でも「治せない」
ここからが、少し残酷な真実です。
肝臓は半分切り取っても元の大きさに戻る強力な再生力を持っていますが、腎臓の細胞にはその機能がありません。一度壊れたフィルターは、二度と再生しない「不可逆的」な性質なのです。
動物病院でもこの「壊れた腎臓」を元通りに治すことはできません。
点滴で一時的に血中の毒素を薄めたり、吐き気を薬で緩和したりすることは可能です。腎臓保護として血管拡張剤も使われるようになりました。しかしそれらは根本的な治療ではありません。薬は「その場しのぎの対症療法」に過ぎないのです。
結果として、頻繁な通院と厳しい食事制限が始まり、楽しかった食事に薬が混ぜられ、ペット本人のQOLは著しく低下します。高額な医療費が重くのしかかり、何より「治らない病気」とゴールがないまま向き合い続けるご家族に、強烈な精神的ストレスがかかってしまいます。
「常識的な飼育法」が腎臓を壊している
では、なぜ近年これほどまでに腎臓病が増加しているのでしょうか。
腎臓病は後天的な疾患で、生活習慣と深い関わりがあります。寿命が延びたことは腎臓病を増加の一因ではありますが、根本的な原因として「生活習慣の変化」に疑いの目を向けてみましょう。
皆さんがネットや獣医師の指導を信じて、良かれと思ってやっている「常識的な飼育法」。もしそこに問題があったとしたら、どうでしょう?
私に見えている「腎臓を早く傷める原因」は、日常の中に潜んでいます。大まかに言えば、以下の3つです。
-
高タンパク食と過食(野生を無視した令和時代の栄養管理)
-
尿量不足(塩を敵にしたことによる弊害)
-
ストレス管理の勘違い(犬猫の気持ちのすれ違い)
不都合な真実「皮下補液の闇」と、医療依存からの脱却
最後に、動物医療のビジネス化が生んだ「不都合な真実」を一つお伝えします。
腎臓病になると、動物病院からは必ずと言っていいほど「塩分を控えてください」と指導されます。たしかに過度な塩分摂取は控えたほうが良いでしょう。しかし、その塩分制限が限界を超えたとき、愛犬・愛猫は脱水し、活力が低下して倒れてしまいます。
そのとき病院で行われる治療が「皮下補液(点滴)」です。 典型的な点滴は生理食塩水やリンゲル液、端的に言えば「きれいな塩水」です。
すべての動物にとって、塩は敵ではありません。むしろ必要不可欠な味方です。食事から塩分を完全に奪えば生命の炎は消えかけますが、病院で塩水点滴を入れれば復活します。
「塩分を制限させておいて、具合が悪くなったら塩水点滴で復活させる」という見方ができてしまいますが、気が付かない飼い主は点滴を「魔法の水」と呼び感謝しています。
この構造はマッチポンプにとても似ています。
消防士が自分で火をつけて自分で消火し、市民から称賛されるといった自作自演。それがマッチポンプ構造です。
これにハマると治療の焦点がズレてしまい、長期化しがちです。
そんな不自然なことをするくらいなら、最初から毎日の食事で適度なミネラル(塩分)を与え、自分自身の口からしっかりと水を飲ませてあげれば良い。それが自然の摂理であり、セルフケアの基本です。
医療は大事ですが、それは距離感がわかっている場合です。過度に依存することは、ストレスと時に新たな病(医原病)を生み出します。私たちがやるべきことは、数値を突きつけられてから病院の処置にすがるのではなく、日常の中に潜む「腎臓を壊す原因」を科学的視点で排除していくことです。
塩、ストレス、そしてタンパク質の理解は、腎臓のセルフケアにおいて極めて重要となります。シリーズ全体を通して、体系的な知識を身につけてまいりましょう。