【腎臓ケアまとめ②】高タンパク食と過食

腎臓病・尿路疾患

こんにちは。岡田です。
前回は、腎臓がゴミ処理場ではなく、身体の究極のエコシステムである「リサイクルセンター」であることをお話ししました。

今回は、その大切なフィルターに日々ダメージを与え続けている原因の一つ、「高タンパク食と過食」についてお話しします。
少し専門的な生命科学のメカニズムも出てきますが、分かりやすく順番に解説していきますので、ペットを抱っこしながらゆっくり読み進めてみてください。

 

腎臓の負担の根本:野生と現代の「ズレ」

ペットフードのパッケージを見ると、「高タンパク・低脂質」を謳う商品がたくさん並んでいます。良かれと思って選んでいる飼い主さんも多いと思いますが、実はここに、腎臓に負担をかけてしまう明確な理由が隠れています。

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結論から言うと、「本来の腎臓の仕様」と「現代の高タンパク食」に乖離が生じていること。
これが腎臓に負担をかけている根源です。

犬の祖先を含め、野生の動物にとって、お肉(タンパク質)は毎日食べられるものではありませんでした。狩りに失敗し、何日も空腹で過ごすことは当たり前です。歴史的に見て、タンパク質とは「滅多に手に入らない貴重な栄養素」でした。

現代の、「朝から肉たっぷりのフードや手作り食」という食事法は、野生と大きくズレています。

動物の身体は「入ってきたタンパク質は無駄にせず、引き留めてリサイクルする」という仕様です。その要所が腎臓です。
腎臓の中の糸球体というフィルターの役割は、捨てることではありません。「血液中の貴重なタンパク質を尿として漏らさないように引き留めること」です。

ここまで大丈夫でしょうか。この正しい考え方にアップデートしてください。

現代のように1日3食、消化の良い高タンパクな食事では、腎臓のフィルターは「残す」ことから「捨てる」ことが仕事になってきます。リサイクルに回すべきタンパク質の残骸(含窒素化合物)が多すぎるあまり、捨てざるを得ないのです。

これまはまるで、慣れない仕事を与えられたサラリーマンのようです。朝昼晩と平日も休日もなく、大量の書類やデータを捌くあいだに過労となり、体を壊します。休ませないといけません。

腎臓のフィルター機能はそう簡単に壊れるものではありません。しかし高負荷な状態が数年続けば話は別です。

タンパク質はフード換算(乾物重量比)で20%程度で良いでしょう。食べない日があっても良いです。

「それでは身体が持たない」との声が聞こえてきそうですが、このまま読み進めてください。
その謎も生物科学で解決できます。

 

身体のリサイクル機能「オートファジー」

「筋肉が壊れたら、その分の肉を食べなくてはならない。そうしないと骨と皮になってしまう。」

一般的に広まっている栄養学の常識です。しかしこの常識、科学的にはかなり間違っています。

オートファジーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。古くなったタンパク質は一旦崩し、何度も再利用する身体の仕組みのことです。ちなみにこれを発表した科学者はノーベル賞を受賞しています。

つまりさっきの常識を正すとこうなります。
「筋肉が壊れても、食べなくても大部分がオートファジーで補完される。ちょっとは食べて補給させるけど。」

オートファジー(自食作用)は、哺乳類に備わる標準的な仕組みです。人だけでなく犬にも猫にもある仕組みです。むしろ人間よりも機能するかもしれません。

常に食料が不足気味だった昔、このオートファジーは大活躍でした。身体のエコシステムの中核を担い、リサイクル拠点の腎臓と一緒に命を紡いできました。

またオートファジーにはリサイクルという側面と、大掃除という側面があります。近年は、健康長寿との関わりが注目されています。
絶食によって働きが良くなることもわかってきました。

理解すれば、世の中の不思議なことも説明できます。例えば380日を超えた絶食のギネス記録や、過酷な環境を生き延びた南極物語のタローとジロー、そして一日一食主義でアクティブに生活している人々が存在する理由。この生命の仕組みに隠されているのです。

話がぼやけてしまうので戻しますね。腎臓の負担を軽減するためにタンパク質を減らしても、みなさんがイメージするような悲惨なことはまず起こりません。

ボディビルダーにするつもりなら話は別ですが、腎臓を守り健康長寿を狙うにとき、タンパク質20%くらいのフードで良いでしょう。一日一食主義の岡田がお勧めします。

昭和時代の高度成長期がもたらした飽食化は、このオートファジーによる身体のエコシステムを壊し始めています。人から始まり、いまはペットにも波及しています。満腹という短期的な快楽が、健康管理の基礎たる「自然の流れ」に逆らっています。たしかに飼育環境の向上により寿命自体は延びましたが、詳しく見れば「病院通いの不健康長寿」が増加しているようです。

 

草からタンパク質を作る「草食動物の仕組み」

先程は、オートファジーによるタンパク質の再利用についてお話しました。今度はもっと踏み込んで、草からタンパク質を作る話です。ちょっとタブーに触れますよ。

哺乳類の世界には、植物を食べて成長する動物がたくさんいます。いわゆる草食獣たちです。
リスにうさぎ、馬や牛。彼らはどうやって筋肉を作っているんでしょう。

ゾウやキリン、サイなどもそうです。大型の動物はほとんどが草食です。さらにゴリラやパンダも草食です。

「彼らは草や葉っぱを、どうやって筋肉にしていると思いますか?」
ペット健康相談では、たまにこんな質問をするのですけど、まあ9割以上の人が答えられません。

答えを申し上げましょう。
腸内の細菌が植物繊維(セルロース)などを栄養にして、自分を複製します。その際に必要となるタンパクも一緒に合成します。菌の寿命は数週間と短く、死んだあとは消化されて動物の栄養となります。こうやって動物はタンパク源を得ています。

びっくりかもしれませんけど、これが自然の摂理です。今後も書き換わらない真実ですので、しっかり記憶してください。

さて、人ではできるのでしょうか。江戸時代の人々はほとんど肉を食べませんでしたが、現代人よりも遥かに身体を動かしていました。農民も飛脚も、その筋肉は基本的に植物が原料です。

これで、ベジタリアンが元気である理由が理解できますね。どんどん成長する赤ちゃんの離乳食も肉じゃないですよね。

人が食べるものがなかった時代に、犬は肉をもらっていません。いわゆる「ねこまんま」で猫はジャンプで屋根に駆け上がり、子を育みました。

またズレてしまうので戻します。腎臓を守るために、この仕組みを活用してください。高タンパク食を控え、身体の負荷が少ない自然に沿った食生活に近づけましょう。

犬が肉食という話は、科学的にはかなり怪しい話です。私の考えは、近代的な学説「スカベンジャー仮説」に極めて近いものです。犬はもっともっと草食寄りだと考えると、いろいろな問題に対する合理的な解決方法が見えてきます。

 

今日からできる、引き算のセルフケア

大勢が信じている常識を覆すには骨が折れます。理屈を突き詰めればキリがありません。
とにかく今回お伝えしたいのは、常識的な「高タンパク食」と、満腹という短期的快楽に依存した「過食」が、身体の本来の仕様とズレを起こしていること。その被害を腎臓がもろに被っているということです。

もし大量消費型の高タンパク食を続けているのであれば、身体の仕様たるオートファジーや腸内タンパク合成の力を借りてみてください。急ハンドルではなく、少し時間をかけてシフトしていくと良いでしょう。

これは腎臓に何か加えるのではなく、減らすというアイデア「引き算のセルフケア」です。

次回『③尿量不足』では、もう一つの大きな原因である「飲水量と塩分の関係」についてお話しします。またここで、一緒に学んでいきましょう。

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