前回はアレルギー性皮膚炎から細菌性皮膚炎への連鎖について話しました。今回は、特に治りにくいと言われるマラセチア(真菌性皮膚炎)について、佐々木先生に深く聞きました。
飼い主がやっていることが、実は悪化の原因になっているという、ちょっと耳の痛い話です。
佐々木先生との対談音声(②)
マラセチアじゃなくても、勉強になると思います。シャンプーのところは飼い主みんなに知ってもらいたい。
※際どすぎる部分を一部カットしております。

参考図解
マラセチアとは何か
マラセチアは細菌ではなく、真菌——カビの仲間です。ただし一般的なカビ(糸状菌)とも少し違う。顕微鏡で見ると雪だるまのような形をしており、パンのイースト菌に近い酵母菌の仲間です。
佐々木先生によると、嗅ぐと甘酸っぱい匂いがするといいます。酵母菌が発酵しているためで、食パンのような匂いに近い。この匂いで「マラセチアがいる」と判断できるほどだといいます。
一般的な抗生剤は細菌に効くものです。真菌であるマラセチアには効かない。抗真菌薬が必要になりますが、これが肝臓に負担をかけるというジレンマがあります。
シャンプーのいい匂いがする子は要注意
佐々木先生が臨床で気づいたことがあります。マラセチアが慢性化している子には、共通点があった。シャンプーのいい匂いがするというのです。
つまり洗いすぎです。
犬は人間と違い、汗腺がほとんどありません。皮膚の保湿は皮脂に依存しています。その皮脂を落とすために、多くの飼い主が週2回シャンプーをしている。中には毎週欠かさずという方もいます。
ところが市販の犬用シャンプーのほとんどはアルカリ性です。油を溶かすためにアルカリ性にしているわけですが、アルカリ性の環境はマラセチアが好む環境でもある。洗えば洗うほど、真菌にとって居心地の良い皮膚になっていくという皮肉な構造があります。
皮膚のバリアを守るという発想
洗いすぎると皮脂が落ちすぎる。皮脂はバリアの一部です。バリアが壊れた皮膚は外敵に対して無防備になる。また常在菌が侵入する。また薬を使う——このループが続きます。
佐々木先生は言います。「本来の皮膚バリア機能を残すためには、適度な油分と水分が必要。それを洗い流すことばかり考えていては逆効果になる」と。
シャンプーは月1回でも十分な子もいます。皮膚の状態や油分の出やすさによって変えればいい。何もない健康な子に週2回は、かえって皮膚病になりやすくする可能性があります。
治療についての本音
痒みが出ると、すぐに強力な薬が処方されるケースが増えています。分子標的薬と呼ばれる比較的新しいカテゴリーの薬で、即効性は高い。ただ長期的なリスクがまだ十分に解明されていない部分もあります。
佐々木先生の考えはシンプルです。副作用リスクがある薬に依存し続けない、という姿勢です。
薬は使う。でも、症状が治まったら一旦やめる。そしてセルフケアに移行する。この全体的なプランを最初から考えておくことが大切です。
皮膚ケアは長期戦略で考える
佐々木先生が対談の中で言っていた言葉が印象に残っています。
「その場しのぎじゃなくて、小さい頃からのケアと、病気になってからのケアを一本の戦略として考えないといけない。」
薬で症状を抑えたら終わり、ではない。症状が治まったらデイリーケアに戻る。そのサイクルを最初から設計しておく。それがペットの皮膚を長く守ることにつながるという話です。