私はペットの薬害が非常に多いと推測しています。その背景には、飼い主が信じる2つの幻想があります。
ひとつは「獣医師が副作用を管理してくれている」という幻想。
もうひとつは「危険な薬なんてない」という幻想。
この記事は、その2つの幻想をズバッと否定し、その後でペットを薬害から守る効果的な対策を2つお伝えします。
その前に、獣医師の説明とはこういうものです。
「これはプレドニンという薬です。胃が荒れるかもしれないので、食欲が落ちたら教えてください」
これが典型的な説明です。シンプルで良いですね。何だか逆に安心できます。
では実際のプレドニンの添付文書には何が書かれているか。以下をご覧ください。
重要な基本的注意
本剤の投与により、誘発感染症、続発性副腎皮質機能不全、消化管潰瘍、糖尿病、精神障害等の重篤な副作用があらわれることがあるので、本剤の投与にあたっては次の注意が必要である。
投与に際しては、特に適応、症状を考慮し、他の治療法によって十分な治療効果が期待できる場合には、本剤を投与しないこと。また、局所的投与で十分な場合には、局所療法を行うこと。
投与中は副作用の発現に対し、常に十分な配慮と観察を行い、患者をストレスから避けるようにし、事故、手術等の場合には増量するなど適切な処置を行うこと。
特に、本剤投与中に水痘又は麻疹に感染すると、致命的な経過をたどることがあるので、次の注意が必要である。本剤投与前に水痘又は麻疹の既往や予防接種の有無を確認すること。
水痘又は麻疹の既往のない患者においては、感染を極力防ぐよう常に十分な配慮と観察を行うこと。感染が疑われる場合や感染した場合には、直ちに受診するよう指導し、適切な処置を講ずること。
水痘又は麻疹の既往や予防接種を受けたことがある患者であっても、本剤投与中は発症する可能性があるので留意すること。連用後、投与を急に中止すると、ときに発熱、頭痛、食欲不振、脱力感、筋肉痛、関節痛、ショック等の離脱症状があらわれることがあるので、投与を中止する場合には、徐々に減量するなど慎重に行うこと。離脱症状があらわれた場合には、直ちに再投与又は増量すること。
本剤の長期あるいは大量投与中の患者、又は投与中止後6ヵ月以内の患者では、免疫機能が低下していることがあり、生ワクチンの接種により、ワクチン由来の感染を増強又は持続させるおそれがあるので、これらの患者には生ワクチンを接種しないこと。
連用により眼圧上昇、緑内障、後嚢白内障、中心性漿液性網脈絡膜症・多発性後極部網膜色素上皮症を来すことがあるので、定期的に検査をすることが望ましい。
リンパ系腫瘍を有する患者に投与した場合に腫瘍崩壊症候群があらわれることがあるので、血清中電解質濃度及び腎機能検査を行うなど、患者の状態を十分に観察すること。
強皮症患者における強皮症腎クリーゼの発現率は、副腎皮質ホルモン剤投与患者で高いとの報告がある。本剤を強皮症患者に投与する場合は、血圧及び腎機能を慎重にモニターし、強皮症腎クリーゼの徴候や症状の出現に注意すること。特定の背景を有する患者に関する注意
以下の患者には、治療上やむを得ないと判断される場合を除き投与しないこと。有効な抗菌剤の存在しない感染症、全身の真菌症の患者(免疫機能抑制作用により症状が増悪することがある)
消化性潰瘍の患者(潰瘍治癒が障害されるおそれがある)
精神病の患者(大脳辺縁系の神経伝達物質に影響を与え、症状が増悪することがある)
結核性疾患の患者(免疫機能抑制作用により症状が増悪することがある)
単純疱疹性角膜炎の患者(免疫機能抑制作用により症状が増悪することがある)
後嚢白内障の患者(症状が増悪することがある)
緑内障の患者(眼圧の亢進により緑内障が増悪することがある)
高血圧症の患者(電解質代謝作用により高血圧症が増悪することがある)
電解質異常のある患者(電解質代謝作用により電解質異常が増悪することがある)
血栓症の患者(血液凝固促進作用により症状が増悪することがある)
最近行った内臓の手術創のある患者(創傷治癒が障害されることがある)
急性心筋梗塞を起こした患者(心破裂を起こしたとの報告がある)
感染症の患者(免疫機能抑制作用により感染症が増悪するおそれがある)
糖尿病の患者(糖新生作用等により血糖が上昇し、糖尿病が増悪するおそれがある)
骨粗鬆症の患者(蛋白異化作用等により骨粗鬆症が増悪するおそれがある)
甲状腺機能低下のある患者(血中半減期が延長するとの報告があり、副作用があらわれるおそれがある)
脂肪肝の患者(肝臓への脂肪沈着が増大し、脂肪肝が増悪するおそれがある)
脂肪塞栓症の患者(大量投与により脂肪塞栓症が起こるとの報告がある)
重症筋無力症の患者(使用当初、一時症状が増悪するおそれがある)
B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(B型肝炎ウイルスの増殖による肝炎があらわれることがある)
腎不全の患者(体内蓄積による副作用があらわれるおそれがある)
肝硬変の患者(代謝酵素活性の低下等により副作用があらわれやすい)
妊婦(動物試験で催奇形作用が報告されており、新生児に副腎不全を起こすことがある)
授乳婦(母乳中へ移行することがある)
小児(発育抑制があらわれることがある。頭蓋内圧亢進症状や高血圧性脳症があらわれることがある)
高齢者(感染症の誘発、糖尿病、骨粗鬆症、高血圧症、後嚢白内障、緑内障等の副作用があらわれやすい)副作用
重大な副作用誘発感染症、感染症の増悪。B型肝炎ウイルスの増殖による肝炎があらわれることがある。また、進行性多巣性白質脳症(PML)が認められることがある。意識障害、認知機能障害、麻痺症状、構音障害、失語等の症状があらわれた場合には適切な処置を行うこと。
続発性副腎皮質機能不全、糖尿病
消化管潰瘍、消化管穿孔、消化管出血
膵炎
精神変調、うつ状態、痙攣
骨粗鬆症、大腿骨及び上腕骨等の骨頭無菌性壊死、ミオパチー
緑内障、後嚢白内障、中心性漿液性網脈絡膜症、多発性後極部網膜色素上皮症(視力の低下、ものがゆがんで見える、視野の中心がゆがんで見えにくくなる等)
血栓症
心筋梗塞、脳梗塞、動脈瘤
硬膜外脂肪腫
腱断裂(アキレス腱等)
腫瘍崩壊症候群(リンパ系腫瘍を有する患者に投与した場合)その他の副作用
過敏症:発疹
内分泌系:月経異常、クッシング症候群様症状
消化器:下痢、悪心・嘔吐、胃痛、胸やけ、腹部膨満感、口渇、食欲不振、食欲亢進、腸管嚢胞様気腫症
循環器:血圧上昇、徐脈
呼吸器:縦隔気腫
精神神経系:多幸症、不眠、頭痛、めまい、易刺激性
筋・骨格:筋肉痛、関節痛
脂質・蛋白質代謝:満月様顔貌、野牛肩、窒素負平衡
肝臓:肝機能障害(AST上昇、ALT上昇、γ-GTP上昇、ALP上昇)、脂肪肝
体液・電解質:浮腫、低カリウム性アルカローシス
眼:網膜障害、眼球突出
血液:白血球増多
皮膚:ざ瘡、多毛、脱毛、色素沈着、皮下溢血、紫斑、線条、そう痒、発汗異常、顔面紅斑、脂肪織炎
その他:発熱、疲労感、ステロイド腎症、体重増加、精子数及びその運動性の増減、尿路結石、創傷治癒障害、皮膚・結合組織の菲薄化・脆弱化
これが現実です。説明と添付文書のギャップ、感じていただけましたか。
幻想①:獣医師が副作用を管理してくれる
獣医師は副作用を管理してくれません。事実上、無理なんです。獣医師の多くは「ペットは人ほど副作用が出ない」と信じているからです。
しかしそれは本当でしょうか。訴えられないだけで、見過ごされているだけではないでしょうか。人間なら言葉で伝えられる症状を考えてみてください。
- 頭痛
- 内臓の痛み
- 手足のしびれ
- めまい
- 幻覚・幻聴
- 味覚障害
- 目のかすみ
これらはすべて、ペットにも起きていると考えられます。ただ、喋れないから獣医師も気がつかない。
そしてこれらの症状を「大したことない」と思ってはいけません。道路で言えば黄色信号です。次は赤信号、つまり重大な有害事象が待っている可能性があります。副作用は無視すべきノイズではなく、事故を防ぐためのシグナルです。
幻想②:危険な薬なんてない
危険な薬なんて・・・山程あります。むしろ安全な薬は存在しないと言ったほうが正しいくらいです。先ほどのステロイドの副作用リストを見てもらいましたが、あれで驚いていてはいけません。私からするとステロイドは安全なほうで、本当に怖い薬は別にあります。もっと危険なジャンルとして、抗てんかん薬、糖尿病治療薬、分子標的薬(かゆみ止めなど)、気管支拡張剤(咳止め)、抗がん剤などが挙げられます。
そのうえで、ステロイドが危ないのは「大量に飲ませすぎ」という別の理由です。
薬を多く飲むほど副作用が出やすくなります。誰でも知っていることです。しかしペットには、驚くほど大量の薬が出されることがあります。プレドニゾロンで見ていきます。
| 低用量 | 高用量 | |
|---|---|---|
| 人間(成人60kg) | 0.08mg/kg | 1mg/kg |
| 犬・猫(獣医標準) | 1mg/kg(人間低用量の12倍) | 2mg/kg(人間高用量の2倍) |
高用量で比べると2倍で収まります。しかし問題は「少なめでコントロールする場合」です。獣医領域での少なめ、つまり1mg/kgは、人間でいう最大量に相当します。少なく使っているつもりが、人間基準では最大量という逆説です。
用量を超えた使用で発生する薬害は副作用とは呼びません。過剰投与による薬物中毒と呼ぶべきでしょう。薬はそもそも身体にとっての毒ですから、中毒で正解です。
ちなみにステロイドは免疫抑制剤です。過剰に免疫が抑制されると、がんの増加やウイルス・細菌感染の悪化につながりかねません。気軽な大量投与の裏で、一体どれだけの子が犠牲になっているか。いや、そう考えるのではなく、彼らの犠牲をどう未来に活かすかを考えるべきでしょう。
身を守る対策は2パターンあります。自分で調べて武装するか、獣医師から説明を引き出すか。どちらも能動的な行動です。
対策①:自分で解決するパターン(副作用の調べ方)
副作用を調べる良い方法があります。それは添付文書を読む方法です。正直に言えば、添付文書を一般の飼い主が理解するのは非常に難しい。しかし今はAIがあります。添付文書をコピーしてAIに副作用を列挙させれば良いのです。わかりにくい部分も解説してくれます。
添付文書の取得も簡単です。こちらのリンクから薬の名前で検索すれば、誰でも無料で入手できます。
なお、犬猫専用の薬は上記リンクでは調べられません。その場合は私が作ったツールをお使いください。このツールはAIで組んでいるので、原本にこだわらないのであればこちらのほうがおすすめです。
たまに薬の名前がわからない飼い主さんがいますが、今後は必ず動物病院で聞いて帰ってくださいね。
対策②:獣医師に頼るパターン(対話のコツ)
獣医師に副作用を全部聞き出すという方法もあります。楽なようで難しいかもしれません。獣医師が副作用を十分に把握しているとは考えにくいからです。
しかし薬があるということは、紙の添付文書もそこにあります。獣医師にも改めて副作用を確認させることで、治療全体が見直されることもあります。なので場合によっては対策①を超える良い手となります。
獣医師の本気を引き出すために、次のようなことをやってみてください。
- 診察室の対話はスマホで録音する。(あえて許可をもらうことで、抑止効果が高まる)
- 聞きたいことはメモにまとめ、診察券と一緒に受付に渡す。
診察の時間内に獣医師に添付文書を読んでもらうのは時間的に厳しいですし、飼い主も心苦しいでしょう。ただこちらの本気度を見せることで、次回以降の対応変化が期待できます。
注:飼い主は守られています。実は獣医師にはわかりやすく説明する義務があります。インフォームド・コンセントと言って、飼い主には十分かつわかりやすい説明を求める権利が与えられています。獣医師の面倒そうな顔を見たくはありませんが、本来の主導権は飼い主にあることは覚えておいて損はないでしょう。
まとめ
対策は①でも②でもよいですが、おすすめは両方やることです。人って、こちらが本気を出せば、相手も本気で対応してくれるものです。むしろ、忙しいときに「ゆるふわな話」や「よくわからない話」をされるほうが嫌なものですから、ズバッといっちゃいましょう。
壁を感じるならチャンスです。その壁を乗り越えたところに、自分にとっても獣医師にとっても、そしてペットにとっても良い環境があります。もちろん気遣い、リスペクトは忘れずに!
