常識が非常識になる栄養科学のQ&A

栄養の本音

空腹時間で長寿って、どういった仕組みですか? 動物の体は食糧難の時代にあわせて設計されており、長い空腹時間は体に負荷が少なく、壊れにくい。病気が減るために寿命が短くなりにくい。つまり長寿になりやすいということです。現代の我々には想像できませんが、つい200年前まで人は常に飢餓に悩まされ、食べるものが無くて死ぬ人もいました。人に依存して生きる犬や猫たちも同じです。500年前、1000年前、1万年前、10万年前と、時代を遡るほど厳しい時代だったのは言うまでもありません。そうした時代を生き抜くことができたのは、身体の中にオートファジーという仕組みがあるおかげです。本来は壊れた筋肉を便や尿に捨てません。一旦バラバラの材料にして、また筋肉に作り変えます。このエコなリサイクルシステムは、身体にとって負荷が少ないのです。車に例えれば、少燃費運転がエンジンを長持ちさせるような感じです。現代はこのエコカーにガソリンを注ぎ込み、アクセル全開で運転している状態、そう考えてもらって良いでしょう。


草食動物の仕組みは雑食でも可能ですか? 可能です。まず我々日本人で考えてみましょう。今のように当たり前に肉を食べるのは戦後の高度成長期からです。世界から評価されている伝統的な日本食や家庭料理は、ほとんど肉を使いません。江戸時代は庶民の肉食が禁じられ、その流れは明治や大正でも大きく変わりませんでした。しかし当時の人々の運動量は現代人を遥かに超えます。強い筋肉と持久力が支えていました。近年、密かに話題となったパプアニューギニアの現地人たちは、サツマイモが主食でありながら筋肉質です。彼らのタンパク摂取量は、我々に比べて圧倒的に少量です。身近な例も存在します。赤ちゃんは離乳食で筋肉を増やし立ち上がります。いわゆるベジタリアンと呼ばれる人たちに栄養失調による短命傾向は見られません。私の調べにおいて犬も同様です。昭和時代まで犬に肉を与えることはおかしなことでした。歴史と事実を正しく検証すれば、私の答えが正しいとなります。


アメリカ基準の食事量を与えたら食べすぎですよね? そうですね、アメリカ基準のカロリー摂取量が日本のペットにも一致するという考え方はおかしいですし、過食による短命リスクを増大させます。まずアメリカの犬の飼育頭数は7000万頭以上、日本の犬は激減中で、たぶん600万頭台です。アメリカは家や敷地の広さ、行動が許容される範囲の広さ、飼い主の行動範囲などから、犬の活動量は多めです。消費するカロリーが多いので、推奨される摂取カロリーも多めです。これを日本の屋内犬に適応しては過食になるのは当然です。そんなことをしていたら、がんや腎臓病が増えるはずです。私の観察ではありますが、アメリカ基準信仰が広まりだしたあたりから、がんや腎臓病が多くなったと思います。


高タンパク食による短命リスクにはどんなものがありますか? 高タンパク食には複数のリスクがあります。ひとつは腸内環境の破壊です。高タンパク食では悪玉菌が増加することが知られており、さらに悪玉菌はタンパク質からアンモニアという毒性物質を作り出します。アンモニアは腸から吸収され体を内側から傷つけます。とくに肝機能が低下した状態では脳に届いて意識障害を起こす可能性があります。それを防ぐために肝臓は全身のアンモニアをかき集め処理。身代わりとなって肝臓自体がダメージを受けます。肝機能が低下しても大量のタンパク食を続けていると、アンモニアは全身を傷つけ慢性炎症を起こします。血栓症による突発的なリスクも増加します。もうひとつ問題を挙げます。高タンパクによる腎臓破壊です。必要以上のタンパク質を取り続けた場合、腎臓の濾過機能を担う糸球体に負荷がかかります。腎臓はその寿命が身体の寿命とも言えるほどの重要な臓器です。また一度壊れるとほとんど再生できません。事実、腎臓が壊れると低タンパク食が推奨されます。


飲水の量が少ないんですけど、これってマズイですよね? 少なさの程度によりますが、あまり良くありません。水は酸素の次に重要だと言えます。細胞や組織を潤し、物質の移動を助け、老廃物を抱えて体外に出ていきます。肺からの蒸発で体温調整にも貢献しています。なお飲水量は次の式でだいたいの辻褄が合います。飲水量=尿量+便中の水分+肺や体表からの蒸発。不足するとまず体は尿量を減らします。しかし老廃物は捨てなくてはならないために、尿は濃くなります。濃い尿の生成は腎臓の負荷となり、早期に腎臓病になるリスクを増加させます。やがて体液や血液量も減らし、血液も濃くなります。血管が詰まりやすくなり、特発的リスクが増大します。


食事を水浸しにすれば水分は十分ですよね? 食事を水浸しにするという対策は有名ですが、意外と効かないことがあります。理由は、その分普段の飲水量が減ってしまうケースがあるためです。食事の美味しさが失われるうえに、意味がないとしたら対策どころではありません。代替策としてお勧めしているのは、食事とは別に手作りスープや飲水に少し味つけして喜ばせる方法です。人と同じで、水道水はがぶがぶ飲まないけれど、お茶やジュース、コーヒー、ビールならたくさん飲むのと同じ理屈です。喉の渇きに頼っていては飲水量を増やすことは難しいでしょう。


塩が必要ってことですけど野生動物は塩を摂らないですよね? 野生動物にとっても塩は命綱です。肉食獣であれば獲物の血ごと取り入れることで塩分を補給します。草食動物では「塩舐め場」や、塩が比較的濃い土壌から摂取します。土に塩があるのは不思議に思うかもしれませんが、過去に海だった場所が山になっている場所もあります。そこに降った雨が干上がれば塩場が形成されます。ミネラルを集めやすい植物を食べる動物もいます。安定的に塩が得られる土地では動物が増えやすく、完全に塩がない土地では動物は少なくなります。


納豆を勧めている理由ってなんですか? 腸内環境の改善です。腸内の善玉菌を増やして、悪玉菌を減らすことが狙いです。あのネバネバの部分はポリグルタミン酸などからなり、消化が悪いために腸内の奥にまで他の栄養素を抱えながら届きます。腸内細菌からするとこんなにうれしい食材はありません。なお人間と動物の腸の仕組みはそっくりです。善玉菌の多い環境では、肝臓病、腎臓病、心臓病、皮膚炎などが減ります。おそらく、ありとあらゆる病気リスクを下げると岡田は見ています。


犬は昔から肉を与えられてきたんですよね? その説は広く信じられていますが、非常に疑わしく、岡田は否定しています。数万年前、人々は手に入れた食料はすぐに食べるという、その日暮らしのような生活でした。備蓄の技術が低かったためです。ですので常に栄養失調による死と隣り合わせでした。とくに肉は危険な森に入り、命をかけて手に入れます。夏は冷蔵庫が無いために保管に向きません。冬はそもそも狩りがほとんどできません。立派な防寒具がない時代に、冬の狩りは無謀とも言えます。秋に蓄えた木の実などを少しずつ食べて春を待っていたのでしょう。そんな時代に犬に与える肉などありません。その後に農耕が発達すると、人々は植物性食品にシフトし、近年までそうした食生活が主流です。やはり犬に肉を与えるのはありえないと考えるのが合理的ですし、歴史的に整合します。


猫は肉食だから肉をいっぱい与えるべきですよね? いいえ。猫は肉食寄りと言えますが、大量のタンパク質は腎臓病を招き、短命リスクを上昇させます。岡田が他のネコ科の動物たちを調べた範囲で、彼らは猫ほど肉を食べていません。野生のライオンは、1日3回も食べません。日が暮れて狩りに成功したら食事にありつけます。肉は保管が利かず、他の動物に奪われる懸念もあるために、仲間と一気に食べます。そして狩りの成功率は低く、一週間食べないこともあります。つまり肉食獣は肉をたっぷりとは食べないのです。基本的に肉食獣は摂ったタンパク質を無駄にしません。身体に備わるオートファジーを活用し、リサイクルしつくします。そうした環境で身体は設計されています。とくに腎臓は過剰なタンパク摂取に耐えられません。この腎臓の貧弱さは現代の猫たちにも共通しており、実際に慢性腎臓不全と診断される猫は多発しています。


ギネス級のペットたちって何で食べてるものがバラバラなんですか? 確かに超高齢ペットを調べていくと食事に共通性があまり見られません。多くの長寿記録は20年以上前に打ち立てられ、現代のような画一的なフードや、手本に沿った食事を与えられていません。その上で岡田独自の考察を加えれば、2つの共通点が浮かび上がります。まずは食事の多様性。人と同じものを与えられるケースは、長寿のペットたちによく見られます。人のさまざまな食材がペットのミネラル不足を解消したり、微量ミネラルの欠乏を防いでいた可能性があります。またあらゆるものを消化する過程で、身体の柔軟性(恒常性)が強化された可能性があります。そしてもう一つの共通点が、人と共通の食事がもたらす幸せ感や満足感です。食事は単なる栄養補給ではなく幸せ感やストレス解除になっています。現代のペットの最大ストレスは人との食事ギャップと言えるでしょう。その差別感が蓄積し、潜在的な短命リスクになっているというのが岡田の考えです。とくに屋内飼育が主流となった現代では、美味しい匂いから逃れることができず、食事ギャップのストレスは最大化しています。つまりは、長寿ペットがバラバラな食事である理由は各地の人々の食事がバラバラだからです。そして食事に正解があるという現代に蔓延している単純な考え方は否定されるべきという結論に至ります。


人間の超高齢者も食事はバラバラですか? はい、その通りです。ギネス級の超高齢者を調べるとわかります。まず超高齢者を輩出しているのは一国ではありません。それぞれの土地の食事で長生きしています。また一般的に体に良くないと信じられている嗜好品を続けていた方々も少なくありません。コーラのような飲料水、アルコール、お菓子、なかには96歳まで喫煙を続けていた方もいます。現代の管理医療からすれば許されないような食生活ですが、私の調べた限りでは医療関係者で記録を出している人は見当たりませんでした。ここでもペットと同じことが言えます。体に少し悪いものが、むしろ体を強くしている可能性。そうしたものを生き甲斐と言い切る、これが私の長寿の秘訣と胸を張って言える。目をよく凝らせば、一見バラバラに思える食生活に、そうした共通点が浮かび上がります。


安いドッグフードはがんになるって本当ですか? 私の知る限りでは嘘と言えます。もしそれが正しいとすれば高いフードや手作り食ではがんが発生しないというデータが必要です。しかし実際にはそのようなことはありません。はっきり言ってしまえば、その常識の元はドッグフード会社による過激な宣伝という側面があり、それを信じる飼い主が広めていった末に常識化した。そう私は分析しています。


飼い主が一番気にするべきは添加物ですよね? いいえ、一概に添加物が悪いとは言えません。ペットフードの品質を保つ、つまり長期間の安全性を保つことが添加物の主な目的です。もし添加物ゼロのフードであれば、ハエがたかり、ウジが発生し、腐敗やカビで危険な食事に変容してしまいます。また脂質の酸化が抑えられず、有害な過酸化脂質が生成されます。適度な添加物は、現代においてはむしろ健康に寄与していると考えたほうが正しいと言えるのです。なお安全とは言え、ペットフードは法律上の食品ではありません。多くのフードは人間の常食として非推奨です。ペットに与える場合も毎回満腹まで、つまり過剰に与えないこと、私が推奨するように納豆や根菜類を加えて、半分くらいに抑える(半手作り食)のはリスク管理上も合理的な使い方だと考えています。

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