岡田が描いている、長生きの設計図
毎日相談を受けていると、しばしば、こんな経験をします。
どんなに丁寧に説明しても、なぜか話が噛み合わない。私の言葉がまったく響いていない。伝え方が悪いのかな、言葉が足りないのかなと。
ということで今回、その謎を徹底的解明してみたのです。
そして見つけました。おそらく答えはこれです。長寿のイメージが、根本的に合っていない。
私の土台になっている「健康長寿って、こういうことだよね!」のイメージが、ちゃんと共有できておらず、そのためにズレを生み出してしまっていた。反省しております。
なので今日は、そのイメージの話をします。頑張って絵まで描きましたので、ぜひ見てみてください!
岡田のイメージする、健康長寿とは
下は長く飛ぶグライダーのイメージ図です。伝えたいのは、「最初にどれだけ高度を稼ぐかで、その後の楽さが変わってきますよ」ということです。

このグライダーのイメージが、私の考えている健康長寿のイメージとぴったりなんです。少し解説しますね。
まず①のほう。最初に高度を稼いでるので、遠くまで飛べそうです。ちなみにグライダーには動力がついていません。基本的には滑空スタイルですから、できるだけ高いところのほうが有利。①のパイロットの心境を考えてみましょうか。だいぶ心に余裕がありそうですよね。景色なんか楽しんじゃったりして、なんかニコニコしてそう。ちょっとくらいのミスも許容できるから、おどおどしてなさそう。想像するに、全体を通して、きっと楽しく気持ちの良いフライトとなるでしょう。
それに対して②はどんな感じでしょう?見るからに低いです。最初からちょっと厳しそう。遠くまで飛べるかもしれませんけど神経がすり減りそう。高度に余裕がないから、ちょっとのミスも許されない。気を抜いたらすぐ地面。だから景色を楽しんでる場合じゃなくて、いつも地面を気にしてる感じ。常に不安と心配、恐怖と緊張を抱えてのフライト。私なら泣きます。
では、このグライダーの感覚のままで、健康長寿の話へ。
若い頃にいろいろな経験をして身体のポテンシャルを高めたペット。それが①の飛行パターンと重なります。野山を駆け回って汚れたり、風邪をひいて治ったり、擦り傷を作っては癒える。我慢することを覚え、ちょっとしたストレスを吹き飛ばす。心が育つ。多様な食事を口にして、胃腸や肝臓が鍛えられる。身体も心も丈夫な子に育つ。たっぷりの健康貯金をもって、後の長い人生を余裕を持って過ごすパターン。
次に②のパターンはどうでしょう。こちらは私がよく言う、箱入り娘タイプ。パピーからシニアまで一貫して穏やかな生活。だから若い頃の健康貯金があまりない。長寿は可能だが低空飛行。自然治癒力が弱く、どうしても医療に頼った不健康長寿となりやすい。心が育っていなければ、ストレスに敏感、怖がり、わがままとなりやすい。傷に消毒薬、何かあれば抗生剤。かゆみ止めに、吐き気止め、下痢止め。薬のおかげで健康に見える。でも低空飛行。
要は長期プランで見てほしい
人生ってものは、犬でも猫でも、けっして短くありません。15年は5475日、13万1400時間。こう見るとすごく長い。だけど彼らはプランを描けません。先を考えないノープラン。だから代わりに飼い主が描いてあげる。
若いうちはちょっとくらい雑に育てる。もちろん事故には気をつけますが、雑だからこそ体が強くなるのは前述の通り。体を鍛えるっていうのは苦行じゃありません。遊びの中で鍛えれば良いのです。「若い頃に思いっきり人生の輝きを謳歌させる」のは、後のことを考えても大事なこと。健康貯金。
メンタルの強さも健康貯金。我慢したらご褒美、指示を守ったらご褒美。そうしたことで心も鍛えておきます。アメとムチという言葉が嫌いな人もいるかもです。別にどんな言い方でも構いません。後々のために大切だってことは知っておいてください。アメとムチ作戦のメリットはいろいろ考えつきますが、ひとつは喜びが増えること。我慢した後の食事は2倍美味しい。お出かけが3倍嬉しい。逆に褒美ばかり与えていると、喜びを感じにくくなるのです。「もっと良いものをよこせ!」になりがちです。そうなると苦労しますよ~。
成長期を過ぎた当たりから、ちょっと変わることがあります。それまでの楽しみは、すべて目の前の出来事でしたが、それがだんだんと変わってきます。「目の前のこと+前に経験したこと」による奥行きのある楽しみ方になってきます。動物は未来を描くのは苦手ですけど、過去の記憶は当然あります。なので豪快な遊びをしなくても、幸せ感は満たせます。それまで蓄えてきた健康貯金を少しずつ使ようにして、怪我や事故のリスクを下げていきましょう。
シニア期は穏やかスタイルにシフトしていきましょう。グライダーはまだまだ飛べます。でもいまは高高度ではありません。「たくさん運動、ガッツリ食べさせる」で若返りを狙うというのは幻想です。グライダーが無理に機首を上げて失速し、結局は飛行距離を損するイメージです。低下してきた運動能力や代謝能力に合わせるのがコツだと言えるでしょう。特に過剰なタンパク質摂取には気をつけてください。今欲しいのは体を作る部品よりも、良い燃料と良い潤滑油です。
蛇足だけど、伝えておきたいこと
短期的に良くないと思うことが、後で良かったとわかる。目の前しか見えないって人には最初は難しいかもですが、誰でも慣れれば先の未来を少し見ることが出来ます。
もちろん人生をずっと何事無く過ごすのもありです。人生が日誌なら、全ページに「昨日と同じ」と書くのもあり。でもさっきのグライダーの軌跡ように、メリハリをつける人生も大ありです。
よく「若いうちに滅茶苦茶やったツケが、歳を取ってから出てきた」なんて言う人がいますけど、よく聞くと違ってることが多いみたい。本当は若い頃のツケではなくて「中年以降にやったツケ」だったり。周りにそんな人がいませんか?笑
幸せ感や人生観は、人それぞれ。私に合わせる必要は全然ありません。でも15歳の子で「長生きさせたい。食が細くなってきた。若い頃みたいに食べてほしい。犬の幸せは満腹だから。」という相談には悩みます。つまり幻想よりの回答にとどめるか、本当の話をするべきか。科学はいつも正義とは言えないんですよね。悩ましい。
ちなみに人だったらどうでしょう。高齢者を焼肉食べ放題につれて行く。毎日満腹まで食べさせる。ちょっとマズイ気がしませんか?たまになら良いですよ、だけど毎日は止めたほうが良いですって。
不健康長寿ってあまり聞かないですよね。私も自分以外で言ってる人を知りません。笑
薬を山盛り飲みながら長生きする子も実際にいます。数字だけ見れば長寿です。でもそれを「健康長寿」と呼ぶのは、ちょっと違うと思っています。このとき不健康長寿という言葉が合います。昭和、平成、令和と、だんだんこっちが増えています。
徹底管理しているうちの子より、実家で親が適当に飼っている犬のほうが健康で長生き。これまでの相談の中で、私はおそらく100回くらい聞いています。こんど実家に帰ったときにコツを聞いてみると良いですよ!と、よく助言します。
ストレスの程度、生きる楽しみ、意欲。それから、「明日はどんな日だろう」「今日の◯◯美味しかったな、今度はいつ出してくれるだろう」ってドキドキしながら寝ること。そういうことが、健康長寿に結構深く関わっていると思っています。
ギネス級の長寿犬たちも、同じだった
世界の長寿記録を持つ犬や猫たちを調べてみると、面白いことがわかります。
現代的な飼育管理をしていた子は、ほとんどいない。田舎の農家で放し飼い、テーブルの残り物を食べて育った、特別なケアは何もしていない、そういう子ばかり。それもそのはず、長寿記録は20年以上前に打ち立てられたものばかり。現代とは飼育の考え方が異なります。なんだか親近感を覚えます。
ちなみに世界最長寿の猫は38歳。コーヒーを飲んでいたそうです。もう滅茶苦茶ですよね。いや、その飼い主がではなく、私たちが教わってきたことが!笑
もちろん、寿命を正確に予言することは誰にもできません。遺伝もある、運もある。
ただ、ちょっと付け加えると。38歳の猫の飼い主さん、歴代2位の34歳猫も育て上げているんです。しかも6匹を30歳超にしています。さっきは運もあると言いましたけど、ぶっちゃけ育て方のほうが影響大です。
②箱入り娘にもいいことがある
- 若いうちの不幸、怪我や事故のリスクが低い
- 管理を怠らなければ長寿を狙える
- 外部刺激に反応しやすいので異変に気づきやすい
普段は次のようなことに気をつけて
- 治癒力・再生力・免疫力が弱いこと
- タイプの違う子のやりかたをそのまま取り入れない
- 無理に薬依存から抜け出そうとしない
- 急発進、急ブレーキ、急ハンドルみたいな健康管理をしない
- セルフケアを取り入れるなら、ゆっくり段階的に
でも、チェンジしたい!いまからは遅いですか?
遅いなんてことはないです。思い立ったが吉日です。ただ、一つだけお願い。急がないでください。
箱入り娘タイプの子は、体がその生活に慣れていて、逸脱できる許容幅が広くありません。急発進、急ブレーキ、急ハンドル、それらは健康管理でも事故の元。「変えたい」という気持ちはそのままに、ペーパードライバーだという自覚を持ち、スピードは控えめです。
たとえば薬を止めたいとき。ここで薬の副作用を知れば、そうした気持ちが出てくることはよくわかります。でも一旦収めてください。止めるより、減らすことを成功としましょう。それだけでも副作用リスクは低下します。
週に一日だけ飲まない日を作ってみる。そんなスタートで十分です。メリットも残しつつの安全な提案なら、獣医師も許可してくれやすいと思います。
やるからには、応援します。グライダーの絵をもう一回見て、できれば他の記事もたくさん読んでおいてください。わからないことはどんどん聞いてください。