免疫とは体を外敵から守るための防御システムのことです。
生まれた時から体に備わっていて、その後もどんどんと強化されていきますが高齢になると弱くなります。
個々の大きさは細胞レベル、もっと小さな抗体レベルですが、それらは別々ではなく連携を取ります。
免疫が戦う外敵は、異物と呼ばれることもあります。そのほとんどは細菌やウイルス、そして癌細胞といったミクロ単位の相手です。
体は常に細菌やウイルスと接触していますが、いちいち感染症を発症しませんし、風邪を引いても自然に治っていくのは、この免疫がすべて処理しているからです。
一日に数百から数千もの癌細胞が生まれると言われていますが、それも免疫が処理してくれているおかげで、私たちも動物たちも健康を維持できます。
感染症は抗生剤で治すもの、がんは抗がん剤で治るという考え方は本質的には間違っています。治癒の主体を担っているのは免疫であり、薬が担うのはあくまでその補助にすぎません。
免疫の研究はどんどん進んでいます。ただ大きな視点で見たとき、まだほんの入口を覗いているに過ぎません。
緻密で、複雑で正確な連携を取り、しかも学習により強化されていくこの免疫システムは、現代科学を持ってしてもまったく再現することができません。
まさに「神様からの贈り物」と呼ぶにふさわしいものです。
このように健康のため生きていくために必要不可欠な免疫ですが、さまざまな要因によって働きが低下してしまいます。
身近なところから挙げれば、睡眠不足や、過度な緊張や興奮といったネガティブな精神状態、極端な肉食(炭水化物制限)、塩などのミネラル不足、行き過ぎた油抜きなど。
医療的な要因を挙げれば、ステロイド、免疫抑制剤、抗がん剤、過度な抗生剤の使用など。
もし極端な病院ぎらいの子であれば、通院自体が過度なストレスになります。
免疫の低下を防ぐためには、上記のようなことはチェックしておくと良いでしょう。
しかしながら、私たち飼い主はもう少し深く考えるべきです。
どういうことかを少し説明します。
例えばストレスは免疫に対してネガティブなのですが、だからと言ってストレスをすべて排除していたらどうなるでしょう。
おそらくその子はちょっとしたことにもイライラしたり、怖くて震え上がったりする、ストレス耐性の弱い子に育ってしまいます。
逆にしつけなどによって我慢強さを身につけた子は、ささいなことにストレスを感じなくなります。
つまりこの例からお伝えしたいのは、「短期的にはストレス回避は有効だが、長期的に見たとき逆効果になりえる」ということです。同様のことは、ほかの多くのことについても言えます。
また免疫自体に学習能力があります。
除菌のやりすぎが良くないと言われるのは、免疫が細菌について学ぶ機会を奪ってしまうためです。
子供がどろんこになって遊ぶのは、短期的には病気になる可能性を高めていると見ることができます。
と同時に私たちは「免疫が強くなって将来の大病を防ぎやすくなる」という視点も持ったほうが良いでしょう。
もちろん将来の長い若い子と老犬老猫は同じではありませんので、やわらか頭で考え方を調整してまいりましょう。
免疫の低下の原因は、年齢やストレスに対する強さといった本人に依存すること、そして食事、まわりの家族、医療といった環境に依存すること、その子によって異なります。
対策はマニュアルどおりの画一的な方法ではなく、ひとりひとりに合った方法を見つけていくべきです。
またご家族がストレスになってしまうような方法だと、良い方法だったとしてもけっきょく長続きしません。
神さまの贈り物たる免疫に対しては、科学や医学で何でも思い通りにできると考えず、自然の摂理に乗りそれをうまく利用していく。そのような謙虚な考え方もとても大切だったりします。
それぞれの状況をお聞きしながらアドバイスしております。必要なときは気軽にLINEでご相談ください。
がんの基礎
がんは免疫との関わりが最も強い病気の一つです。
健康体であってもがん細胞は毎日発生するのですが、免疫がことごとく駆逐してくれるので簡単に病気になることはありません。
同じ環境で発がんする子としない子がいるのも免疫力の差で説明することができます。
がん治療でも予防でも、免疫力改善の重要さは明らかですから、ぜひ日頃から取り組みましょう。
そして予防こそが最高のがん対策であり、取り組みは健康なうちから始めておくことが大切です。
乳腺腫瘍(乳がん)
動物の乳がんは、人よりも多い印象があります。
私が推測している理由は、乳房自体の数が多いこと、そして食事の影響です。
日本人の場合、和食から洋食に変化してきたことと連動するように乳がんが増加しています。
またハワイに住む日系人は乳がんが多いというレポートもあり、食生活の変化がもたらした結果だと推測できます。
まず乳製品は与えないようにしてください。
乳製品には女性ホルモンのエストロゲンが含まれるため、乳腺腫瘍への影響が懸念されます。
悪性リンパ腫
血液のがんに分類され、がん化したリンパ球が全身に広がります。
リンパ節に集まり腫瘍を作ることがありますが、手術ですべてを取り除くことは不可能です。
そのため多くの動物病院が最初から抗がん剤治療を勧めます。
一般的には複数の抗がん剤をローテーションして使います。
それは効果を高めるということよりも、毒性を分散させ体が耐えられるようにするためです。
それでも実際には強烈な副作用で治療を断念するケースが少なくなく、体力や気力、そして副作用により低下する免疫力をケアする対策が必要となってきます。
肺がん
肺腺がん、扁平上皮がんなどの種類がありますが、他からの転移、たとえば乳腺腫瘍が転移してくることもあります。
肺に限りませんが、毛細血管が多い臓器は血液を流れてくるがん細胞が引っかかりやすく、転移がんの好発部位となります。
摘出手術は根治治療になりえますが、実際には再発が多いためによく抗がん剤の追加治療が提案されます。
原因とは言い切れませんが、飛び散りやすい猫砂は吸い込むと肺の中で固まりやすいため別のものに変えましょう。
メラノーマ
人に比べて犬に多い印象があります。
皮膚や口腔内に発生するケースでは手術で取り切れる可能性があります。
だからといって同じ生活を続けていては、いずれ同じことが起こり得ます。
メラノーマは物理的、化学的な刺激によって発生、悪化する可能性があるがん腫です。
ですので例えば口腔内でしたら固いフードを勢いよく食べるような習慣があれば何か工夫したほうが良いでしょう。
肥満細胞腫
肥満細胞という免疫細胞の一種ががん化する病気です。
脂肪腫と混同される方がいますが、あちらは良性腫瘍でまったくの別物です。
肥満細胞はヒスタミンというアレルギーに関わる物質を産生し、炎症との関わりが深い細胞で、皮膚には赤いおできのようなものが現れます。
原因ははっきりしておらず、おそらく生活習慣、食事やストレスとの関わりが考えられます。