皮膚・口・耳入門

ペットの皮膚には、人と同じようにさまざまなトラブルが起こります。
そして人で見られる皮膚病のほとんどは、ペットでも見られます。

違いは人の皮膚のほうが比較的丈夫で、犬猫たちのほうが弱いと言えるでしょう。その理由としては、体毛の量、皮膚自体の厚み、皮膚の酸性度などが考えられます。

皮膚というものを本質的に考えると、体内部と外界をわけ隔てる壁のような組織だと言えます。

体内の熱を外に逃したり、逆に外気で冷えないようにしたり、菌や有害物質が体に入らないようにしたり、紫外線で内臓が焼けるのを防いだり、そして血液などの体液が漏れ出ないようにしてくれています。

外界との壁であるために、最初にダメージを受けやすい場所です。

そのため皮膚では細胞が生まれるペースが速く、最初から寿命は比較的短めに設定されています。

また役目を終えた細胞もしばらく皮膚表面に残り、角質バリアとして皮膚バリア機能の一端を担います。

皮膚の最外層には、角質をエサにしてたくさんの細菌が住み着いています。この細菌はけして邪魔者というわけではなく、皮膚常在菌として健康な皮膚にも存在します。

体とこれらの菌は常に共存関係にあり、皮膚トラブルとの関わりが深いために無視できません。

またさまざまな種類の菌いて、お互いにバランスを保っています。皮膚トラブルがある子では、このバランスが崩れている可能性にも着目していくとよいでしょう。

人の皮膚はpH4.5程度の弱酸性ですが、犬猫ではだいぶアルカリ側に傾いていておりpH7~8程度と言われます。

その違いは皮膚常在菌からすると居心地にかかわる大きな違いです。

多くの菌はpH4.5ではおとなしく、pH7付近で活発になりますので、この点で考えたとき犬猫の皮膚は菌にとって快適です。

また人は入浴により菌の大部分を洗い流しますが、犬猫はそうではないのでやはり菌からすると嬉しい環境です。

このような環境の違いからペットの皮膚常在菌は多くなりやすのですが、菌はお互いに牽制しあっているためにバランスは保たれ、皮膚の健康性も保たれます。ただそれが一旦崩れ出したとき、一気に広がるなどして治療に難儀するケースが出てくると言えるでしょう。

崩れるきっかけになりえるものは、引っかき傷や怪我です。物理的に皮膚のバリア機能が喪失し、漏れ出した体液などが環境を変えてしまいます。

アレルギーもきっかけになりますが、それ自体だけでなく、伴うかゆみが掻きむしりを誘発し、やはり皮膚バリアを壊してしまうといった二次的な要因も関わります。

なお皮膚は菌が内部に侵入してくるのを防ぐために免疫の力も借りています。免疫力の低下で、角質の深くへの菌の侵入を許しやすくなるために、皮膚トラブルの一因になりえます。

そのため感染性の皮膚炎では、免疫抑制作用を持つステロイドを使いにくくなります。

抗生物質、特に塗布薬によって一部の菌を攻撃していると、やはり皮膚常在菌のバランスを崩しやすくなります。ステロイド塗布薬は免疫を抑制しますので、環境を大きく変えてしまうことがあります。

皮膚トラブルを起こす要因は上に挙げた以外に、まだいくつも考えられますし、さらにその子の体質も影響してきます。

状況をよく聞いてひとりひとりにあったアドバイスをしておりますので、必要なときはペット健康相談からご連絡ください。

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