最初に私の話です。
ボディソープもシャンプーもずいぶんと前から止めています。止めたキッカケは、悩みの蕁麻疹が良くなるかもしれないという思いつきです。
そのおかげかわかりませんが、蕁麻疹は気にならなくなっています。掻くこともなくなりましたし、肌はベタベタしていません。むしろ前よりもしっとりすべすべ、体臭まで減った気がします。つまり体感上良いことだらけです。若い頃の肌とまでは言えませんけれど、良い感じです。
仮説ですが、私たちは体を洗いすぎることで、かえって損をしています。人もそうですし、ペットもそうです。
科学的に考えていきますが、あくまで仮説です。
ボディソープについて
現代人にとって、ボディソープで体を洗うのが当たり前。でも盲点があります。
・多くは石油や植物油から作られた合成界面活性剤。
・皮脂や角質をしっかり取り除く一方、有益な肌のバリア成分を奪うことになりがち。
・皮膚に共生している常在菌のバランスを崩しやすく、かえってトラブルを招くことがある。
・失ったバリア成分を、人工的な保湿剤で補充する仕組みのものが多い。
ボディソープの環境負荷
ボディソープの使用量は、日本全体で1億リットルに達しているかもしれません。
ボディソープとシャンプーを国民がどのくらい使うかというデータは見つかりませんでしたので、大体の感覚で計算します。だいぶ少なめに考えてみました。
・ワンプッシュ2.5ml(ボディソープとシャンプーの合計で5ml)
・1年間で1.8リットルくらい。
・半分の国民しか使わないとして、1億リットルくらい。
日本だけでも、こんなに使ってる可能性があります。下水処理するにしても環境に良いわけはありません。
下水処理場の建設費、維持費、電気代。ボディソープの原料となる石油、植物油、エネルギー、プラスチック容器、運送費。節約できるならそうしたいですね。
皮膚の構造
ここで皮膚の構造を簡単に説明します。外側から、表皮、真皮、皮下組織の三層に分けられます。
真皮や表皮もとても大切な層なのですけれど、ここでは一番外側で体を守っている表皮について、もう少し詳しく見てみます。
表皮について:
1.角質層
死んで角化した細胞の層。さらに皮脂で覆われ、皮膚常在菌が共生している。生命が作り出す複合バリアの層。
2.顆粒層
角化が進行中の比較的古い細胞の層。保湿やバリア作用を持つフィラグリンなどを作る。
3.有棘層
生きた細胞が密に並ぶ層。刺激を伝えたり、角化の準備をする。
4.基底層
幹細胞が分裂して新しい皮膚細胞を作る層。メラノサイト(色素細胞)もここに。
要するに、表皮は「死んだ細胞のバリア」と「生きた細胞の再生工場」が協力して働いている、精密なシステムです。
用語解説:
・皮膚常在菌
皮膚の上で、私たちと共生している菌。角質、脂質などを餌にしている。種類や菌数の多さ、そしてバランスが大切。免疫との関わりも。
・フィラグリン
すでに死んだ角質細胞をまとめたり、肌の潤いを保つ、皮膚のバリア機能に関わるタンパク質の一種。
美肌
美肌というと美容として考えがちですが、ここでは「しなやかで丈夫な肌」「皮膚トラブルを起こしにくい肌」という感じでまいります。すり替えではなく、たぶん健康肌は美容を支えるベースです。
ところで赤ちゃんの肌がなぜ美肌なのでしょう。若い人の場合、中高年の場合は何が違うのでしょう。それぞれ簡単にまとめてみます。
赤ちゃんの場合:
赤ちゃんを大人用のボディソープで洗う人はいないでしょう。汗をかいて皮脂もいっぱいでますが、不思議なことにベタベタせず、さらさらしています。実は赤ちゃんの肌は菌だらけ。菌が皮脂をどんどん食べてくれているのです。理想的な状態です。
若い人の場合:
若いうちは皮脂がたくさん作られます。ボディソープで洗ってもすぐに肌が保護されるのです。菌を洗い流しすぎていればベタベタするかもしれません。皮膚トラブルに悩むときもあります。それでも皮脂が多いおかげで乾燥からは保護されやすいと言えます。
中高年の場合:
皮脂の分泌量が減ってきます。ボディソープで洗うと保湿機能が復活しにくく、お風呂上がりは肌がパリパリに乾燥して痒くなることもあります。皮膚常在菌の餌が少なく、菌のバランスは崩れがちです。痒くてボリボリ掻いてしまい、それが刺激になったり、バリア機能を壊す原因となります。
加齢臭
加齢臭は皮脂の酸化で生じる2-ノネナールが主因とされます。40代以降は皮脂のバランスが変化して、加齢臭が発生しやすくなります。
ちなみに皮脂を食べてくれる常在菌が減ると臭いは強くなりがちです。臭いを落とそうとボディソープで洗いすぎれば、かえって菌が減り、皮脂が酸化しやすくなるという悪循環に陥ります。根本的な解決策の一つは、洗いすぎないことです。
対策
もし皮膚のトラブルに悩み続けているのでしたら、ボディソープ、シャンプーを止める、もしくは数日ごとに減らし、タオルや手ぬぐいで体を洗う方法を試してみる価値があると思います。私の経験では最初の1~2週間はベタベタが気になり、そのあとで日増しにメリットが得られます。
日本古来の「手ぬぐいに洗浄」には、意外と多くのメリットがあります。まとめも兼ねて列挙しておきます。
・角質や皮脂が程よく残り、バリア機能が維持されやすい
・皮膚常在菌が残りやすく、バリア機能が強化されやすい
・皮膚をこすることが、血行、神経、ホルモンに良い刺激となりえる
・毛髪が皮脂でコーティングされ、艶やコシが出てくる
ボディソープをやめるのは極端に思えるかもしれませんが、一度「手ぬぐい文化」を試してみる価値はあります。