皮膚は体を覆う最大の臓器であり、外界との境界線として常に働き続けている。面積は体表全体におよび、その重さは体重の約15%にもなる。皮膚は単なる外皮ではなく、「環境と身体の間にある最前線の臓器」ともいえる。
皮膚は三層構造になっている。
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表皮:角質層からなり、外的刺激の最前線を防ぐ。新陳代謝が活発に行われ、28日ほどで入れ替わる。
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真皮:血管や神経、コラーゲン繊維などが分布し、皮膚の柔軟性や感覚を担う。
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皮下組織:脂肪が蓄えられ、保温や衝撃吸収に働く。
皮膚にはさまざまな役割がある。
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防御機能:物理的な刺激、病原菌、紫外線などから体を守る。
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感覚機能:痛み、温度、触感などを感知し、脳に伝える。
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体温調節:汗腺や血管の拡張・収縮によって熱をコントロール。
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代謝・排泄:皮脂や汗を通じて老廃物を排出し、ビタミンDの合成にも関与。
そして見落とされがちだが、皮膚表面には皮膚常在菌という微生物の生態系が存在する。これらの菌は病原菌の侵入を防ぎ、免疫系の成熟や調整にも深く関わっている。皮膚のバリア機能は、角質層・皮脂膜・常在菌叢という三位一体の構造で成り立っているのだ。
この常在菌のバランスが崩れると、特定の菌(マラセチア、ブドウ球菌など)が異常繁殖を起こし、皮膚炎やかゆみ、においの原因となる。
最後に盲点をひとつ。
現代の飼育環境では「清潔にしすぎる」傾向が強い。頻繁なシャンプー、消毒、除菌は、皮膚に本来備わっている防御力をむしろ弱体化させる。常在菌を洗い流してしまえば、皮膚は無防備になり、バリアとしての機能は崩れる。
皮膚を守るとは、洗うことではなく、育てることでもある。それが本質だ。