「薬は効果が保証されたもの」「薬は国が承認した物だから安心」
こうした考え方は基本的に誤っており、世界的に見ても、日本人が薬を過剰に使用する一因となっている。
人が口にするものには、食事と薬がある。
食事は基本的に天然物であり、身体が本来の仕組みとして受け入れる構造の中にある。
一方、薬は(漢方薬を除き)ほぼすべてが工業的に合成された人工化合物であり、本来、人体にとっては異物である。
こうした化学合成物質の摂取は原則として認められないが、例外的に、特殊な状況下で目的が明確であり、リスクを理解させた上で使用されるときに限り許可される。
これが、薬という制度の構造である。
「効果効能を認められたものが薬である」という定義も、因果が逆である。
正しくは、もともと毒性を持つ物質に対し、“この用途なら例外的に免責する”という制度的ラベルが貼られている。
効果効能とは、その毒性に一時的な正当性を与えるための免責の記述である。
また、薬は治癒をもたらすものではないという事実にも触れておくべきだ。
薬はほとんどが対症療法であり、症状を一時的に操作することを目的としている。
病気が“治る”のは、あくまで体が持つ恒常性=自己修復機構によるものであって、薬そのものの働きではない。
たとえば、高血圧の薬は血圧を数時間下げるが、高血圧症そのものを治すわけではない。
糖尿病の薬、コレステロール降下薬、鎮痛剤、制吐剤、便秘薬、風邪薬も同様である。
「薬で病気を治す」という考え方は、制度と現実の混同から生じた誤解にすぎない。