魚をもらうべきか、釣り方を教わるべきか

「何を食べさせればいいですか?」
これは日々、飼い主さんから寄せられる質問の中で最も多いものの一つだ。

もちろん、疾患がある場合にはある程度の方針や選択肢を具体的に示す必要がある。だが、私はできるだけ「その子を見て、考えて、選んでください」と伝えたいと考えている。それが「魚を与えるのではなく、釣り方を教える」という姿勢の根っこにある。

魚をもらうことは楽だ。しかも、すぐに役立つように見える。でも、それだけを繰り返していると、「次は何をあげればいいの?」と、永遠に答えを求め続ける状態に陥ってしまう。
それは“知識”ではなく、“依存”だ。

私はこれまで、納豆、サバ缶、根菜類など、多くの「ヒント」を出してきた。けれど、それらをそのまま“答え”として使ってしまえば、意味が反転する。

本当に健康をつくるのは、「なぜだろう?それって正しいのか?」と考え、ときには疑う力だ。

消化の良いものを与えていれば長生きするのか?

肉を多めにしていて間違いないのだろうか?

ペットがこんなに減っていて、動物病院はどうやってやりくりしているのだろうか?

健康長寿の子って、こんなに厳格な食事管理をしているのだろうか?

そうした問いを繰り返すことが、健康だけでなく、信頼と理解を育てる土壌になる。

だから私は、LINEでもサイトでも、「答え」よりも「視点」を渡したいと思っている。釣り方を覚えれば、状況が変わっても、自分で判断できるようになるからだ。

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