良質なタンパク質というミスリード

「良質なタンパク質を選びましょう」——健康志向のフードや手作り食で、しばしば耳にする言葉だ。だがこの言葉には、健康を誤った方向に導く“ミスリード”が潜んでいる。

「良質」とは、主にアミノ酸スコアが高いことを指す。つまり必須アミノ酸がバランスよく含まれているかどうかで決まる。卵や肉、魚など動物性食品が代表例である。

しかし現実には、多くの人が「良質なタンパク質」という言葉を誤解している。豚より鶏が良い、肉より魚が良いというように、脂質やカロリー、消化性、添加物などを含んだ“なんとなくの印象”で評価している。これは完全にズレている。タンパク質の質を論じるべきであるのに、他要素をごった煮にした不明瞭な判断基準である。

はっきり言えば、それはリテラシー不足と、栄養士などによる啓蒙の歪みに起因する。専門家の中にも「良質なタンパク質を摂れば健康になる」といった単純化した発信を行い、かえって人々を構造的に誤解させている。

そもそもアミノ酸スコアが低いからといって“体に悪い”わけではない。低質とされる植物性タンパク質も、食物繊維や微量栄養素を含み、総合的には有用な存在だ。

さらに、「良質=たくさん摂るほど良い」と短絡的に結びつけることで、過剰摂取に陥るリスクもある。過剰な動物性タンパク質は腸内環境を乱し、アンモニア産生、慢性炎症を引き起こす要因にもなる。

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