EPA&DHAの良さと、サバ缶の目安量

「EPAとDHAが体にいい」——これはもはや言うまでもないほど、広く知られる栄養知識となった。人間の世界ではサプリメントも豊富に出回っているが、私が提案しているのはもっと身近で、美味しくて、自然な補給法だ。それがサバ缶である。

私はこれまで、肝臓病、腎臓病、心臓病、皮膚病、がん、関節炎、神経疾患…と、ありとあらゆる症例の犬猫にサバ缶を勧めてきた。そして、健康な子にももちろん取り入れてもらっている。理由はシンプルだ。「効果が出る」「喜んで食べる」「安い」。この三拍子がそろっているからだ。

サバ缶1缶には、EPAとDHAが合計でおよそ3000mg含まれている。この量は、高価なオメガ3サプリメントと比べても遜色ないどころか、むしろ実用性で勝る。与える目安は納豆と同様、体重1kgあたり1g/日。5kgの犬なら5gほど。缶の中の魚身と油をざっくり混ぜて、その分量を目安にしている。

特筆すべきは、嗜好性の高さだ。納豆以上に好む子も多く、与えるたびに嬉しそうにする。これは生理学的な栄養だけでなく、「美味しいものを食べている」という**心理的報酬(プラセボ)**の側面も大きい。食が喜びと結びつくことは、全身の生理系にも良い影響を与える。

さらにサバ缶は人の保存食としても優れており、ストックしやすい。ただし、開封後は酸化が進むため、そのまま放置は推奨しない。私は100円ショップで手に入る製氷皿を使い、小分け冷凍するよう案内している。食事時には自然解凍か、ポットのお湯を少しかけるだけで使える。さながら“サバ茶漬け”のような、滋味あるトッピングになる。

よく「うちは亜麻仁油を与えてます」と言われるが、それはEPA・DHAとは本質的に異なる。植物由来のα-リノレン酸は体内でEPAやDHAへと変換される必要があるが、その変換効率は非常に低く、実質的な効果は乏しい。ここを混同している飼い主は意外と多い。

スーパーで手に入る物で良い。基本は水煮缶でよいだろう。味噌煮缶はむしろ性能的良いと思うが、美味しすぎてグルメ化してしまうのが心配点だ。いずれも塩分量は意外に少なく、実質的に問題になることはない。缶詰の油も捨てず、魚身と一緒にしっかり使う。EPA・DHAの多くはこの油に含まれているからだ。

食べものは「効くかどうか」だけではない。どう摂るか、どう感じるか、どう日常に馴染むか。そのすべてが作用の一部になる。サバ缶は、犬や猫の体にとって“良質な魚油”というだけでなく、心にも届く一品なのだ。

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