「守破離(しゅはり)」という言葉がある。
武道や茶道の世界で、学びの進化を示す三つの段階だ。
守破離の三段階:
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“守”:まず型に従うこと
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“破”:その型の意味を理解し、他と照らして破ること
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“離”:自分の型を創り、独立して判断できる状態
だが、これは単なる修行の話ではない。
現代の犬や猫の健康管理、そして飼い主自身の思考にも、この構造はそのまま当てはまる。
たとえば「守」は、獣医師、教科書、マスメディア、SNSといった制度的な情報を受け入れている状態といえる。
「総合栄養食で十分です」「人の食べ物は与えてはいけません」「犬は肉食寄りです」——これらはすべて、“守”の典型だ。
それらを否定するつもりはない。制度の中で生まれた情報にも合理性があり、役に立つことも多い。
けれど、それに盲目的に従ってしまうと、「正しさ」は判断停止をもたらす。
「うちの子に何を食べさせたらいいですか?」という質問に対して、私は「こうしなさい」とは指示はしない。
納豆やサバ缶などのヒントを提示するが、観察して、考えて欲しい。
それが“破”のステージである。
「破」とは、制度の外を知り、問いを持ち始める段階だ。
「なぜ納豆?」「本当に肉が最適?」「ペットが減っているのに動物病院はなぜ成立しているのか?」
そうした問いが、思考の回路を開きはじめる。
そして「離」。
制度を捨てるのではなく、制度を理解した上で、必要な要素を選び取り、自分の型を持つ。
情報を使いこなす力がつけば、正解を探す必要はなくなる。
“自分の問い”と“自分の答え”で、動物の健康を支えられるようになる。
守破離とは、単に「学びの段階」ではない。
それは知の主権を取り戻すプロセスであり、依存から自立へと至る道筋だ。
まずは「守」からでいい。
制度を疑う前に、まず経験すること。試し、観察し、問いを持つこと。
もしうまくいっていない、現状に不満がある、原因は違うところにあると感じるのであれば、
「破」のステージに進めるべきだろう。
私自身が歩んできた道でもある。
トライすることにもちろんリスクはある。
しかし、やらないことにもリスクがある場合は、守破離を思い出してほしい。