多くの人が「リンが腎臓病の原因」と考えています。
しかし、リンが腎臓を直接傷つけると考えるのは、生理学的には正確とは言えません。
「リンは体に毒だ」という表現も、かなり偏っています。
たしかに過剰なリンは血管や臓器の障害に関与しますが、それは他のミネラルでも同様です。
実際、リンはカルシウムに次いで体内に多く存在する必須のミネラル元素であり、
ナトリウムよりも圧倒的に多く、骨や細胞膜、ATPやDNAなど生命の基本構造に関わっています。
通常、リンは食事から十分に摂れ、不要分は尿に排泄されるために、欠乏も過剰も稀です。
体内のリンが増えるとしたら、まず考えるべきは尿量不足による、リン排泄量の減少です。
なお尿量不足の主原因は、慢性的な飲水量不足です。
飲水量不足の状況下では、濃い尿を絞り出すことになるために、腎臓の負担となります。
このほうがリンよりも遥かに大きな問題です。
さらに言えば、メンタル的なストレスも腎臓病の原因ですので、過度なリン制限が食事の喜びを減少させ、逆にネガティブ要因になる可能性も考慮するべきです。
こうした構造を理解せずに、リン制限をしておけば大丈夫とするのは、私からすると非常に危うく見えます。
リンと腎臓病のより正しい理解は次のように整理できます。
飲水量不足 → 尿量不足 → 腎臓の負担増加 → 腎臓病発症・悪化
飲水量不足 → 尿量不足 → リンの排泄量減少 → 体内リン量増加
リンと腎臓病を直接結びつけるのは強引です。
同時に進むことはありますが、相互関係にあるわけではなく、原因が共通しているということです。