「タンパク質は健康に良い」——この考え方は今や常識となりつつある。
筋肉の維持、免疫の強化、ダイエット効果など、ポジティブなイメージが浸透し、ペットにも高タンパク食が広く勧められるようになった。しかし、「多ければ多いほど良い」とするメリットが先行しすぎて、やがて支払うことになる健康の代償に目が届いていない。
タンパク質の過剰摂取が及ぼすわかりやすい影響は、腸内環境に現れる。
腸内に大量のタンパク質が多く入ると、それをエサにする悪玉菌が増殖し、アンモニア、インドール、スカトールといった有害物質を発生させる。これらは肝臓の解毒負担を増やすだけでなく、体内に慢性的な炎症状態をもたらす。
さらに高タンパク食では、炭水化物が削減される傾向にある。これにより善玉菌のエネルギー源である食物繊維や発酵性糖質が不足し、腸内環境の悪化は一層進行する。腸内の乱れは、免疫系、神経系、代謝系にも影響し、複数の病気の引き金になり得る。
タンパク質は、代謝・排泄において負荷が高いと言える。構造的に窒素原子を含み、その代謝過程で、アンモニア・尿素・クレアチニンといった物質が生成される。それらを処理するのは肝臓と腎臓の役割だ。
アスリートやボディビルダーを目指すならば話は別だが、日本の室内犬にまで高タンパク基準を盲信的に適用する風潮は、極めて非論理的だ。特に飼育環境も運動量も異なるアメリカのペットフード基準を、そのまま適用している日本の実態には違和感を禁じ得ない。